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マシンピラティスで気持ち悪い…原因は好転反応じゃない?乗り物酔いしやすい人が知るべき3つの医学的対策

ピラティス豆知識
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「体験レッスンで吐き気がして、途中で休んでしまった…私には向いてないのかな」。
せっかく勇気を出してマシンピラティスを始めたのに、そんな辛い経験をして落ち込んでいませんか?

実は、私のスタジオに来る方の約2割が、最初は同じ悩みを抱えています。そして、その不調の正体は、スピリチュアルな「好転反応」などという曖昧なものではなく、医学的に説明できる「動揺病(乗り物酔い)」「迷走神経反射」である可能性が高いのです。

この記事では、理学療法士としての視点から、根性論ではない「脳と自律神経の仕組み」に基づいた解決策を提示します。吐き気の原因を正しく理解し、適切な対策を知ることで、あなたの不安はきっと解消されるはずです。


この記事の著者

高橋 玲奈(たかはし れな)
理学療法士 / ピラティススタジオ専属トレーナー(エデュケーター)
総合病院のリハビリテーション科で5年間勤務後、ピラティスインストラクター(エデュケーター)に転身。医学的知識に基づき、「めまいや酔い」に悩むクライアント300人以上を継続可能な状態へ導く。「気合いで慣れろ」は間違いであり、身体の仕組みを理解すれば不快感はコントロールできると提唱している。

なぜマシンピラティスで「気持ち悪い」と感じるのか?

まず断言させてください。あなたが感じた吐き気は、毒素が出ている証拠(デトックス)などではありません。無理に我慢して続けると、症状が悪化し、最悪の場合は嘔吐してしまう危険性さえあります。

では、なぜマシンピラティスで気持ち悪くなるのでしょうか? その主な原因は、「動揺病(乗り物酔い)」「迷走神経反射」の2つに集約されます。

1. 動揺病:脳がパニックを起こしている

動揺病と好転反応は、医学的に全く異なる現象であり、混同すべきではありません。
マシンピラティスでは、リフォーマー(専用マシン)の上に仰向けになり、台がスライドする動きを繰り返します。この時、あなたの目は「止まっている天井」を見ているのに、耳の奥にある三半規管は「体が揺れている」と感じています。

この「視覚情報」と「三半規管」の情報のズレこそが、脳を混乱させ、吐き気を引き起こす最大の原因です。これは車酔いと全く同じメカニズムであり、あなたの体質がピラティスに不向きなのではなく、脳が一時的にエラーを起こしているだけなのです。

マシンピラティスで「酔う」メカニズムの図解

マシンピラティスで酔う原因である動揺病のメカニズム。視覚と三半規管の情報のズレが脳を混乱させる図。

リフォーマーに仰向けで寝ている人のイラスト

マシンピラティスで酔う原因である動揺病のメカニズム。視覚と三半規管の情報のズレが脳を混乱させる図。

目からの情報「天井は止まっている」 vs 耳(三半規管)からの情報「体は揺れている」

マシンピラティスで酔う原因である動揺病のメカニズム。視覚と三半規管の情報のズレが脳を混乱させる図。

マシンピラティスで酔う原因である動揺病のメカニズム。視覚と三半規管の情報のズレが脳を混乱させる図。

脳内で情報が衝突(ズレ)し、「異常事態(毒?)」と誤認

マシンピラティスで酔う原因である動揺病のメカニズム。視覚と三半規管の情報のズレが脳を混乱させる図。

防衛反応として「吐き気」が発生

2. 迷走神経反射:自律神経の急激な乱れ

もう一つの原因は、「迷走神経反射」です。慣れない動きに緊張して呼吸を止めてしまったり、頭を急に下げたり上げたりすることで、自律神経のバランスが崩れ、急激な血圧低下を引き起こします。これにより、脳への血流が一時的に不足し、めまいや冷や汗、吐き気が生じるのです。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
「好転反応だから出し切った方がいい」という言葉を鵜呑みにせず、辛い時はすぐに休憩してください。
無理をすることで脳が「ピラティス=不快なもの」と学習してしまい、トラウマになってしまうからです。
医学的な原因がある以上、精神論で耐える必要はありません。

三半規管が弱くても大丈夫!「酔い」を防ぐ3つの医学的対策

原因がわかれば、対策は立てられます。三半規管が弱い人でも、以下の3つのポイントを意識するだけで、驚くほど楽にレッスンを受けられるようになります。

対策1:視線の固定(スポッティング)

バレリーナが回転しても目が回らないのは、視線を一点に残しているからです。ピラティスでも同様に、「視線固定(スポッティング)」が有効です。
リフォーマーで動く際、天井の模様や照明など、動かない一点を見つめ続けるようにしてください。視線をキョロキョロさせないことで、脳に入ってくる視覚情報のブレを減らし、混乱を防ぐことができます。

対策2:呼吸を絶対に止めない

「頑張ろう」と力むと、無意識に息を止めてしまいがちです。しかし、迷走神経反射と呼吸には密接な相関関係があります。
息を止めると血圧が変動しやすくなるため、きつい動きの時こそ、意識的に「フゥーッ」と息を吐き続けてください。深い呼吸は副交感神経を優位にし、自律神経を安定させる最強の安定剤です。

対策3:食事の「2時間ルール」

低血糖と食事のタイミングには、明確な因果関係があります。
空腹すぎると運動中に低血糖になり、吐き気を誘発します。逆に、直前に食べると消化不良で気持ち悪くなります。
ベストなタイミングは、レッスンの2時間前までに食事を済ませること。もし時間が空いてしまった場合は、レッスンの30分前にゼリー飲料やバナナなど、消化の良い糖質を少しだけ摂るのがおすすめです。

それでも辛い時は?「勇気ある撤退ライン」と継続の判断基準

「対策をしてもダメだったらどうしよう…」と不安に思う方もいるでしょう。
人間の脳には「順応(慣れ)」という素晴らしい機能があり、多くの人は3〜5回ほど通ううちに脳が揺れに慣れ、症状が出なくなります。

しかし、以下のような場合は、身体からの「NO」のサインかもしれません。

  • 対策をして3回以上通っても、毎回激しい吐き気がある。
  • レッスン後、翌日までめまいや頭痛が残る。
  • 日常生活(仕事や家事)に支障が出るレベルの不調が続く。

このような場合は、無理にマシンピラティスにこだわる必要はありません。揺れの少ない「マットピラティス」や、動きの穏やかな「ヨガ」など、あなたに合う運動は他にもたくさんあります。大切なのは「マシンピラティスを続けること」ではなく、「あなたが健康で心地よく過ごすこと」です。

よくある質問 (FAQ)

最後に、私がスタジオでよく受ける質問にお答えします。

酔い止め薬を飲んでレッスンを受けてもいいですか?

はい、全く問題ありません。
最初は薬の力を借りてでも、「気持ち悪くならずに最後までできた!」という成功体験を作ることが、脳にとって非常に重要です。慣れてきたら徐々に薬を減らしていけば大丈夫です。

先生に「気持ち悪い」と言い出しにくいのですが…

遠慮なく伝えてください。プロなら必ず対応します。
インストラクター(エデュケーター)にとって、クライアントの安全管理は最優先事項です。「少し酔いやすいです」と事前に伝えておけば、マシンの負荷を軽くしたり、頭を下げる動きを減らしたりと、メニューを調整してくれます。

まとめ:吐き気はあなたのせいじゃない。対策を知れば怖くない

マシンピラティスで感じる吐き気は、あなたの体質が悪いわけでも、根性が足りないわけでもありません。脳と自律神経が繊細に反応しているだけの、生理的な現象です。

  • 視線を一点に固定する。
  • 呼吸を止めない。
  • 2時間前までに食事を済ませる。

まずはこの3つを意識して、もう一度だけチャレンジしてみてください。それでもダメなら、別の方法を探せばいいだけです。
あなたの健康作りが、苦痛ではなく、心地よい時間になることを心から応援しています。


参考文献

本記事はスポーツ医学の一般的知見に基づき執筆されていますが、症状が重い場合や改善しない場合は、医師の診断を受けることを強く推奨します。

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